「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~
「なるほど」

 エルキュールは、マドレーヌを咀嚼して飲みこんでからつぶやいた。

「では、翡翠に関する売買の優先権をいただける、と?」
「エルキュール、残念ながらそれはお約束は出来ないのです。いろいろ複雑な事情がありますので。ですがこの地方、あるいはこの帝国の人たちは義理人情に厚く、恩はけっして忘れません。他国のあなた方が困っている人たちに手を差し伸べて下さるということを知れば、悪い感情は抱きません」

 慈善病院にはあなた方の国の人たちも大勢来ているのだし、とは告げなかった。

 あてつけがましいことはしたくなかったのである。
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