「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~
(大丈夫。動脈まではいっていないみたい。これなら、わたしの力で充分)

 ホッとした。

 血がとめどなく流れ落ちていく。腕から地へポタポタと落ちて行き、そこに血だまりが出来つつある。

「まだ自己紹介をしていませんでしたね。わたしは、アイです」

 腕の傷から気を逸らす為、兵士に声をかけた。まだあどけなさの残っている兵士の顔は、血の気がひいてしまっている。

「パトリス・モーリアック少佐です、奥様。ちなみに、そこで突っ立って怯えているのはピエール・ミノー少佐です」

 しっかりした声で答えてくれたので、心から安心した。
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