召喚された魔王の花嫁…が私って本気ですか!?

「行きたくないなー、はあ……」


魔王様の吐息が、私の耳をくすぐってきた。


走って逃げ出したい衝動に駆られたのに、今日も何とか堪えきった。


もし本当にそうしてしまったら、魔王様はきっと傷つくんだろうな、という予感がするからがんばったのだ(誰か褒めて!)。


これは自意識過剰とかでなくて、真剣にそういう気がしている。


だけど、そろそろ顔だけでも離さないと心臓が破裂しそう……


「……お仕事って、そんなにたくさんあるんですか?」


不自然にならないように、話しかけながら半歩後ろに下がって、少しだけ距離を取った。


「仕事量自体はそうでもないんだけど……毎日のように入る面会が毎回ねちねちと長くて、フラストレーションが溜まるんだよなー」


魔王様が再度力をこめて、私のことをしっかりと抱きしめてきた。


ついさっき空けたはずの隙間は、あっという間にないものにされてしまった。

< 121 / 229 >

この作品をシェア

pagetop