召喚された魔王の花嫁…が私って本気ですか!?
「行きたくないなー、はあ……」
魔王様の吐息が、私の耳をくすぐってきた。
走って逃げ出したい衝動に駆られたのに、今日も何とか堪えきった。
もし本当にそうしてしまったら、魔王様はきっと傷つくんだろうな、という予感がするからがんばったのだ(誰か褒めて!)。
これは自意識過剰とかでなくて、真剣にそういう気がしている。
だけど、そろそろ顔だけでも離さないと心臓が破裂しそう……
「……お仕事って、そんなにたくさんあるんですか?」
不自然にならないように、話しかけながら半歩後ろに下がって、少しだけ距離を取った。
「仕事量自体はそうでもないんだけど……毎日のように入る面会が毎回ねちねちと長くて、フラストレーションが溜まるんだよなー」
魔王様が再度力をこめて、私のことをしっかりと抱きしめてきた。
ついさっき空けたはずの隙間は、あっという間にないものにされてしまった。