召喚された魔王の花嫁…が私って本気ですか!?

それにしたって、毎日何かしら欲しいものがあるなんて……


「前・魔王様の潜伏先はそんな不便な場所なんですか?」

「ぷはっ、『潜伏』って!」


笑うのを堪えら切れなかった魔王様は『ごめん、ごめん』と私に謝った。


「前・魔王様は間違っても、『潜伏』はしていませんね。俗世間から離れて、それはそれは満喫されていますよ。よほど楽しいのか、肌もツヤツヤしています。ただ、使い慣れているものや食べ慣れているものがちょこちょこ欲しくなるだけなんです」


それって、海外旅行で梅干しを食べたくなる、みたいな?


「母さんのために毎日要望されたものを用意してあげてるんだから、たまにはこっちの要望も聞いてもらおう」

「むしろ大喜びで生地を探してくださると思います」

「わー、目に浮かぶ」

「前・魔王様は日用品や食料は手に入りにくいのに、礼服の生地は手に入るんですか?」


訳がわからない。前・魔王様の避難所は一体どんな場所なの?


それなのに、魔王様とリナさんは困惑しきりの私を見て、笑いを噛み殺していた。

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