召喚された魔王の花嫁…が私って本気ですか!?
…………ほうらね。
知ってたよ。いつものことだから。
もうちょっと趣向を凝らすとかすればいいのに。
ビショビショに濡れた上靴を靴箱から取り出した。
靴下が濡れるのは嫌だから、靴下を脱いでリュックにしまってから上靴を履いた。
生足は目立つんじゃないかと思うけれど、教師は見て見ぬふりだ。
あっ、違った。1度だけ『靴下はどうした?』と聞かれたことがあったんだった。
けれど、『上靴が濡れてるので』と答えたら、『そうか』で終わってしまった。
生足で濡れた上靴なんて、『私はイジメられています』って宣伝して歩いているみたいで、惨めに思っていた。
先週までは。
でも、私は魔王様の花嫁なんだし、目立ったっていいよ。
いいはずがないけれど、いい! いいよ!
『とにかくいいよ!』
魔王様の声が聞こえてくるようで、こみ上げてきそうな笑いを必死で堪えた。