召喚された魔王の花嫁…が私って本気ですか!?

…………ほうらね。


知ってたよ。いつものことだから。


もうちょっと趣向を凝らすとかすればいいのに。


ビショビショに濡れた上靴を靴箱から取り出した。


靴下が濡れるのは嫌だから、靴下を脱いでリュックにしまってから上靴を履いた。


生足は目立つんじゃないかと思うけれど、教師は見て見ぬふりだ。


あっ、違った。1度だけ『靴下はどうした?』と聞かれたことがあったんだった。


けれど、『上靴が濡れてるので』と答えたら、『そうか』で終わってしまった。


生足で濡れた上靴なんて、『私はイジメられています』って宣伝して歩いているみたいで、惨めに思っていた。


先週までは。


でも、私は魔王様の花嫁なんだし、目立ったっていいよ。


いいはずがないけれど、いい! いいよ!


『とにかくいいよ!』


魔王様の声が聞こえてくるようで、こみ上げてきそうな笑いを必死で堪えた。

< 215 / 229 >

この作品をシェア

pagetop