召喚された魔王の花嫁…が私って本気ですか!?

2.6

眼下に広がる景色に、心を掻っ攫われた。


石造りの町並みの至るところで、小さな明かりが鈍く灯っているのが見える。


すっかり見惚れてしまって……夜のテーマパークでも見下ろしているみたいな、そんな気分になっていた。


今魔界にいることも、魔王様に抱えられていることも、その間は完全に意識の外にあって、頭をよぎることはなかった。


だから耳元でその優しい声がしたとき、すごくびっくりしてしまった。


「ゆっくり下すよ。気をつけてね」

「わっ、ま、魔王様……」


反射的に魔王様の手を強く握ってしまった。


「怖い? だったら、このままでいようか?」


『このまま』って、どういう意味?


……はっ! 私、お姫様抱っこされてるんだった!


生まれてこの方、恋愛に疎かった私にとってこんな衝撃的なことが、すっぽり頭から抜け落ちるなんて……


二重で衝撃だった。


どうやら私はそれほどまでに、魔界の夜景に夢中になっていたらしい。

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