黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
「それにしても、ミオ様の聖女のお力は水晶にだけではなく、ミオ様のお好きなお花にまで込められるなんて。歴代の聖女様の文献にはそのようなことは記されていなかったわ」

「ああ。だがミオ様は花に能力を込めることは10年の眠りから目覚めた時から無意識にされていた」

「目覚めた時から…」

私はミオ様が10年の眠りから目覚め、舞い落ちるサクラの花びらを手にした時を思い出す。

「しかも癒しと風の力を合わせ持つ聖女様だ。やはりミオ様は歴代の聖女様の中でも強いお力を秘めているようだな」

「そうね…」

「毎日王国中に届くようにとサクラの花びらにもお力を込め、風に乗せて皆に届けてくださる心優しいお方だ」

「本当に素晴らしい聖女様だわ」

「だが無理をしている時もある。自身が黒髪であることも気にされているようだ。よく見ておいてくれ」

「分かっているわ。あと、外出の予定があるわ。あなたより先に私がミオ様とデートよ。悪いわね」

「…くれぐれも頼んだぞ。お披露目でこの王国での黒髪のイメージはかなり好転したが、全ての者に受け入れられた訳ではない」

「ええ。でも黒髪を隠していた人達が隠さなくなったり、王都では黒髪の住民も増えてきていると報告もあるわ」

「それは本当に喜ばしいことだな」

「ええ」

「そして、この王国の聖女様であるミオ様に近づく不審な者も出てくるだろう。騎士団から護衛の人数を増やす手配もしてある」

「これからは神殿や王宮の外に出る機会が増える。十分に警戒して行くわ」

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