黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
作業中はダニエル殿下とアーロ様、女性の神官様だけが私の近くにいる。
このお二人なら怖くはないし、女性が多い方が安心する。
女性の神官様達は聖女の私だけでなく、ダニエル殿下やアーロ様をチラチラと見ては頬を染めていて楽しそうだ。
ダニエル殿下は逞しくキリッとしていて、逞しい男らしさがある方だ。
アーロ様は細身で身長は高く、長めの前髪で目元は少し隠れているけれど、瞳は綺麗な金色で整った顔立ちをしている。

私は聞きたいと思っていたことをダニエル殿下に聞いてみた。

「ニホン…ですか。いえ、聞いたこともない国ですね」

「そうですか。他国を巡っているダニエル殿下なら何かご存知かなと思ったのですが、やはり別の世界なのでしょうね」

近くにあれば行けるかな、なんて考えていたけど、やっぱり無理か。
この生まれ変わりはもう納得しているからいいんだけどね。

「たまに日本食が食べたくなるんですよね」

「食文化の違いは確かに国によって様々ですからね」

ダニエル殿下も頷いている。

「ミオ様、それはどの様な食べ物なのでしょうか?」

「お米はこのくらいの大きさで……」

私はお二人に説明した。
このエーデル王国にもお米に似たような食材はあるけれど、大きさとか固さや味が少し違うし、高級な食材のようで食べる機会が少ない。

「もしや、クッカと呼ばれている食材のことではないでしょうか。私に心当たりがあります」

「え!?」

「ええ。もしかすると手に入るかもしれませんよ」

「本当ですか!?」

「エーデル王国への輸入もミオ様の為ならきっと大丈夫ですよ。…これはおもしろいことになりましたね。ウィリアム殿下との交渉の材料が増えました。腕が鳴りますね。ミオ様、他にはどのような食材をお探しでしょうか?」

「他にも!? よろしいのですか!?」

「もちろんです」

楽しそうに話をする二人を見ながらメモを取るアーロ。

「…ウィリアム殿下に何と報告すべきか。お二人の距離が縮んでしまいましたね」

興味深い内容に耳を傾けながらも悩むアーロだった。

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