黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
ふと誰かの視線を感じて見てみると、長い赤い髪の女性が私を睨んでいた。
だ、誰？
周りは誰もいないから、私を見ているよね？
戸惑っているとその女性が近づいて来てニコリと微笑み、スッと頭を下げた。

「あ、あの…？ 私に何か？」

困惑しながら立ち上がり訪ねてみた。

「聖女様、初めまして。私はフローレンス・シャレーと申します。父はベン・シャレー侯爵、この王国の外務大臣でございます」

「は、初めまして。ミオ・シミズです」

あれ？ 睨んで見えていたのは気のせいだったかな？
挨拶をした後もにこやかに微笑んでいるフローレンス様。
毛先をカールさせて美しく整えられた髪、意思の強そうなスッとした切れ長の瞳、お化粧もこの方の雰囲気によく似合う色合いでとても綺麗な人。
上質そうなドレスを纏い、所々に高級そうなアクセサリーを身に着け、背筋を伸ばしたその姿は自信に満ち溢れているように見える。
侯爵家ということは貴族のお嬢様なのね。

「あの…？」

微笑みながらも全身を値踏みされているような視線にゾッとした 。

「……少々お伺いしてもよろしいでしょうか？」

「はい」

「聖女様はウィリアム殿下とは以前からのお知り合いだったのでしょうか？」

私がウィル様と知り合ったのは最近だけど、ウィル様は１０年前から私のことを知っている。
何て答えたら正しいのかしら？

「え……いえ」

迷いながらも私が答えるとフローレンス様はピクリと眉を寄せて不機嫌そうな顔をした。


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