黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
「時間まであと少し時間があるから、ここで緊張を和らげようと思って」

ロッティは王都の裏路地にある定食屋さんの娘さんだ。
夜はお酒も出していて居酒屋のようになると言っていた。
お昼から営業していて今はまだお客様が少ない時間帯。

「緊張?」

「人前は苦手なのよ…」

「ええ? お祭りの時はそんな感じしなかったけど」

「酔っていたから…」

「フフ。普段のミオは随分大人しい性格なのね。お酒飲む?」

「今飲める訳がないでしょ!でもまた今度お店に来ていい?」

「もちろんよ!美味しいものをたくさん作っておくわ。頑張ってね!」

「うん。今日はいつもよりたくさんの人達が集まっているんだって。緊張するー!」

「そりゃあ、噂の可憐な聖女様とウィリアム殿下が揃うのだからね」

「ええ? ウィル様なら分かるけど私なんて地味な顔よ」

「何言ってるんだか。周りを見てみなよ」

「?」

周りを見渡すとお昼前から来ているお客様達と目が合い、頬を赤く染めている人がいた。

「ああ、シエナ様を見ている人達でしょ? いつも皆見ているのよ。綺麗だもんね!」

「おぉ。そうきたか」

ロッティとシエナ様は苦笑いをしている。

「本当にシエナ様ってば素敵よね!王宮騎士団の制服がまたお似合いで凛々しくて格好いいのよ!」

するとお店の入口の方が騒がしくなった。

「あら、お迎えみたいよ」

「え?」

「こちらにいらっしゃったのですね」

「ウィル様!先に向かっていたはずですよね?」

ウィル様がお店に来たことで店内がざわめきたつ。

「早めに午前中の仕事は終わらせました。あなたがこちらに寄ったとお聞きして、私もご挨拶をと思いまして」

私の腰に手を添えたウィル様に抱き寄せられた。

「先日はお祭りに参加させていただきありがとうございました」

優美に微笑むウィル様に男女問わず、この場にいる皆が見惚れてホゥとため息を溢す。

「また来てください。今度はウィリアム殿下もご一緒に」

「もちろん。実桜様と二人で伺いますね」

周りの男性客にチラリと目線を向け、極上の笑みを浮かべながら実桜と共に店を後にした。

「わぁ、すごい牽制!あんなに溺愛されているのに、ミオは何を悩んでいるのかしら? 今度飲んだ時に聞いてやるか」

ロッティは首を傾げながらクスリと微笑んだ。


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