黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
王宮の廊下に似つかわしくない、バタバタと走る複数人の足音が聞こえた。

「失礼いたします!」

「何だ? 騒々しい」

「国王様!あっ!ダニエル殿下もご一緒でございましたか!」

席を外そうとするダニエルを国王が止め、慌てている側近から書類を受け取る。

「畑一面が黒くなり…枯れた?」

国王の言葉にダニエルがピクリと反応する。

「畑の植物の育成が悪いと報告があり、ウィリアムが調べていた所だな。植物が黒く変色した後で細くなり枯れてしまう。それが徐々に拡がりつつあると…」

書類を読み進める国王が眉を寄せ、声色を変えた。

「おそよ250年前に蔓延した風土病の再発生。それは黒髪の聖女様が『黒髪の呪い』をかけているせいだと住民が騒いでいる!?」

報告に来た側近をジロリと睨む。

「は、はい。騒動は大きくなってきております!」

「愚かな!まだそんなことを言っているのか!この地方の領主は…。ウィリアムをここへッ!」

「本日はシャレー侯爵邸へ」

「……そうか。では私が向かう。準備をしろ!」

「ハッ!」

一気に室内が慌ただしくなった。


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