黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
「…本当だわ。普段ならこの一面には色とりどりのお花が咲いているのに、黒く変色して枯れているわ」

私の癒しの力は水晶だけではなく植物にも力を移せる。
そう考えると植物も治癒できそうなんだけど…。
掌に力を込めると、フワッと薄い膜のような物でパッと弾かれる感覚がした!

「あっ!」

キラキラと輝くこともなく、植物の状態は変わらなかった!

「……直接触れて力を込めてみます」

枯れた植物を包み込むようにして触れて力を込めてみたけど、何も変わらなかった。

「……そんなッ!」

力の違和感を感じて掌を見つめていると、この場にいる神官様達も心配そうな顔をして声を上げた。

「聖女様のお力が効かないとは!?」

「……もう一度やってみます」

両手でさっきより力を込めたけれど結果は同じ。

「どうして!?」

「まぁ、そんなに大声で。はしたないですこと」

後ろから声が聞こえて振り向くと、フローレンス様がクスクスと笑いながら私達のことを見ていた。

「フローレンス様!」

「聖女様でしたか。どんな野蛮な方がお話をされているのかと思いましたわ」

「あ…」

「あら、でももう『聖女様』ではないのかしら? 風土病も治せないのですから。国民からも信用されていないではないの。だからウィリアム殿下は私の元へと来てくださっているのね!」

「え?」

「聖女ではないあなたは用済みなのよ。ウィリアム殿下の婚約者は私になるはずよ!連日我が屋敷に、私に会いにきてくださっているもの」

「ウィル様が?」

聖女じゃなければ用済み。
フローレンス様の言葉が重くのし掛かる。
ウィル様からも、この王国の人達からも必要とされない。
全身からザァッと血の気が引いた。

「ああ、その馴れ馴れしい呼び方も改めた方がよろしくてよ。聖女ではないあなたはあの方に愛されないのよ!」

「ッ!」

聖女でもないただの私ではやっぱり愛されない…?

「それはあなたよ」

ザッとシエナ様が私を庇うように前に立ち、私の横にはアーロ様が並んでいる。


< 228 / 257 >

この作品をシェア

pagetop