黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
この王国の人達に認めてもらいたいと必死になっていたわ。
自分の存在意義を見つけるかのように。
でも心からこの王国の人達を信じられていなかったから、聖女の力が出なくなったのよ。
人から嫌われることを怖がっていたから。
この王国で出会った人達の笑顔を思い出す。
もう怖くはないわ。

「ウィル様、私を愛してくれてありがとう」

信じることとは、愛した人に愛されることとは、こんなに心が喜びに満たされるのね…。

その瞬間、優しい光に包まれた！
地面を通して輝き、それはどこまでも続く勢いで伸びて行く。

神殿の桜が地面の光を吸収するかのように輝き、元の色を取り戻した！
そして満開の花が一斉に咲き、風に乗ってたくさんの花びらがこの王国の美しい空に拡がる！
淡く優しい色が一面に…。

力が戻ったのね。
もっと遠くまで届いてと、両手を胸の前で組み合わせて祈りを込める。
この王国全体が光に包まれ、キラキラとした桜の花びらがどこまでも舞って桜色に染まる。

ウィル様の皮膚の爛れからの出血も止まり、怪我も治ってきているわ！

「あぁぁ…！良かった！ウィル様…」

ホッとしたと同時に今までで一番の眠気を感じて、咄嗟に私はウィル様の手を握り、最後まで力を送り続けた。

「もし私がまたいつまでも眠り続けてしまったら、あなたは別の幸せをみつけてね…」

私はウィル様がいつも私の黒髪にしていたことと同じようにウィル様の髪に触れる。

「愛しているわ…」

そして美しい金色の髪にキスをする。
このエーデル王国では愛しい人の髪にキスをすることは、求婚の証。
愛している人だからこそ…。

でももう起きていられない。

「さようなら……」

私は深い、深い、眠りに落ちた…。



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