黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
すると、来客があったようでシエナ様が聖女の間の扉の方へと向かい話をしていた。

「ミオ様、ウィリアム様がいらっしゃっていますが、いかがいたしますか?」

戻って来たシエナ様が教えてくれる。

「ウィル様ですか? もちろんまいります!」

先程のいろいろなことをお詫びしなきゃ!
あの場からここまで運んでくれたお陰でお風呂に入れたし!

「少し失礼します」

まだ固まっている王妃様とソフィー様に一言伝えて席を立つ。

「ウィル様、お待たせしました」

ウィル様がいる聖女の間の扉の外に出た。

「………」

「ウィル様?」

私を見ると、目を見開いて固まってしまったウィル様。
え? 王妃様達に続いてウィル様まで固まってしまったわ。
どうしたのかしら?
徐々に頬が赤くなってきたような?
ハッとしたウィル様に頭を下げられた。

「ミオ様、先程の私の行いをお詫びさせてください」

「いえ!私の方が泣いてしまったりして、本当に申し訳ございません!ご挨拶の場を途中で退席してしまったし、ウィル様に部屋まで運ばせるなんて!」

私はさっきのウィル様との近すぎる距離やよく考えたら『お姫様抱っこ』だったことを思い出した。
前世での25年間そんなこととは無縁だった私。
綺麗な人とはいえ、男性とあんなに密着したことは初めてだった。

「ミオ様?」

カァッと顔が赤くなり、頬に手を添えて俯いた私を心配して顔を除きこむウィル様。
わっ!またウィル様の良い香りがするし、顔が近い!
待って!私は35歳よ!
…うん。少し落ち着いてきたわ。

でもまた立ち眩みがしてきた。
やっぱり本当に具合が悪いのかも。
グラリと身体が傾く。

ポスンッ!とウィル様の胸に凭れ掛かる私を抱き留めてくれる逞しい腕。
今日は何度もウィル様の優しさに助けられたわね…。

「ミオ様!?」

ウィル様の声を聞きながら身体から力が抜ける。
あれ? やっぱりなんだかずっと昔から聞いていたような、懐かしいような声ね…。
私の意識はプツンと途絶えた。


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