黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
それにしても…。
鏡を見る度に自分の顔に違和感がある。
私は35歳のはずなのに、記憶がある25歳までの顔より若く見えるのだ。
まるで10代のような幼さがあり、髪型も10代の頃と同じ、前髪パッツンのストレートロング。
額にできた傷痕が治らずそのまま残り、シミになってしまったところが消えているし、肌の張りも違うわ。
なんで?

「ウィリアム様がまた見惚れてしまいますね」

鏡をじぃっと見ている私にシエナ様が微笑みながら言う。

「あぁ、そういえば、毎回褒めてくれますね。ウィル様の方が綺麗なのに!流石王子様ですねぇ。リップサービスも完璧だわ」

「まぁ、ミオ様!ご覧くださいませ!このお美しい艶やかな黒髪、長い睫毛に宝石のような黒い瞳!そして形の良い小さな唇!きめ細かく輝くような白いお肌!ミオ様はとても可憐で素敵ではないですか!お世辞ではなく本当のことですわ!」

「ええ? あ、ありがとう…」

綺麗なシエナ様の顔が近づき力説してくれるけど、鏡に映る私達を見ると、どう考えてもシエナ様の方が美人なんだけど…。

「それに、あんなに見つめられているのに気づきもしないところも可愛らしいですわ」

「え?」

「フフッ。いいえ。そろそろ庭園にまいりますか?」

「はい。そうですね」

10年振りに動かす身体は少し動くとすぐに疲れてしまうようで、毎日神殿の庭園を散歩しながらリハビリをしている。
本来なら寝たきりの状態だった人が、起き上がって歩くなんてできないだろうけど、そこはやはり聖女だからなのだろう。

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