黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
「どうしたの?」

あれ? 元気がないみたい。
悲しそうな顔をしているわ。

「エリーおねえちゃんがおねつなの」

お姉さんの体調が悪くて心配なのね。
5歳くらいの赤茶色の髪の女の子は大きな瞳からポロリと涙を流した。

「ちょっと待っててね」

女の子の頭を撫でて微笑むと頷いてくれた。
私はバスケットに入れていた明るい色のお花を数本取り出して組み合わせて花束を作る。
そしてバスケットに敷いていた布で包み、髪に結んでいたリボンをほどいて持ち手に結び、花束を完成させた。

「元気になりますように!」

女の子のお姉さんが元気になることを願うとキラッと花に輝きが増した。

「え?」

今光った?

「わぁ!きれいなおはな!」

ハッとして花束を女の子に渡す。

「どうぞ」

「おねえちゃん、ありがとう」

「早く元気になるといいね。あなたはひとりでここへ来たの?」

「ううん。おにいちゃんといっしょ。あそこにいるよ。じゃあおねえちゃん、どうもありがとう!」

女の子が見ている視線の先にはアーロ様とお話をしている男の人がいた。
女の子は大事そうにお花を抱えてお兄さんの元へと走り出した。
アーロ様は女の子が抱えている花束を興味深く見ていた。

「ミオ様」

「あ、ウィル様。お待たせしました」

「いえ、見事な手捌きでした。素晴らしいですね」

「フフ。簡単な花束ですよ。早く元気になるといいですね」

「そうですね。ミオ様のお花できっと明日には熱も下がり体調も戻ると思いますよ」

「ええ? 明日にはですか? そうだといいですね」

「ではまいりましょう」

「はい」

泣いていた小さな女の子がお兄さんやアーロ様に笑顔でお花を見せている。
本当に明日お姉さんの熱が下がればもっと笑顔になるね。

その後に食べた王妃様が取り寄せてくれたお菓子はやっぱり美味しくて、ウィル様と楽しい時間を過ごした。
見たこともないお花や食べ物、生活の仕方も異なるこの王国での暮らしに少しずつ馴染み始めていた。

おかげで前世の嫌な記憶に蓋をすることができた。
私を『いらない』と言った両親の記憶を…。


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