黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
いよいよ式典が始まる。

「では私は先に出ますが必ずミオ様の近くにおりますので」

「はい」

緊張がぶり返してきた!

「お兄様、ミオ様は私達にお任せくださいませ!」

「頼んだよ」

国王様や王妃様に続き、凛々しく微笑み前を見て進んで行くウィル様。
金糸で細かな刺繍がされた丈の長い白いコートを翻して歩く、髪が短くなったウィル様の後ろ姿を見る。
あんなにたくさんの国民の前で、王族らしい堂々とした立ち振舞い。
国王様や王妃様はもちろんだけど、誰もが笑顔でウィル様を見ているわ。
この舞台袖から見ている王宮や神殿で勤めている人達も誇らしそうに微笑んでいる。
そんな皆の期待を背負い、いずれはこの王国の国王様のになるのよね。

「……格好いいわね」

舞台袖からウィル様の後ろ姿を見ながらポツリと呟く。
この1ヶ月でウィル様の人柄や周りの人達がウィル様をどう見ているのかが分かってきた。
あの若さで既にたくさんの公務をこなし、時に厳しく、そしていつもの穏やかな瞳で優しく微笑みつつ的確な指示を出している。
人見知り王子様だと思っていたのは私だけで、その人柄に自然と人が集まり、皆にとても信頼されている王子様だった。

「ミオ様!そうです!お兄様は格好いいですわよね!?」

大きな瞳をさらに大きくして嬉しそうな顔。
ソフィー様は何かと『お兄様』のお話をしてくる。

「そうね。フフッ」

「やっとお兄様のことが!」

「ソフィー様はお兄様が大好きなのね。本当に仲の良い兄妹ね」

「えぇ!? ミオ様……」

あれ? 残念そうな顔をしてしまったわ。

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