黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
スッとウィル様が立ち上がり、私の黒髪を一房手に取り掬い上げる。
何かを伝えたいような瞳で私を見た後に、ゆっくりと瞳を閉じて黒髪にキスをした。
しばらくの間そのまま私の黒髪にキスをしているウィル様。
ざわめきと、緊張感が漂う会場に戸惑う。

私の黒髪にキスをした後に、胸の前で手を添えてまた私を見つめている。
ウィル様の透き通るような青い瞳に熱が籠っているみたい。
髪型も変わり、いつもより大人びた表情をしたウィル様。
ドキリと私の胸の辺りから音がした。

落ち着かない胸に違和感を覚えつつ、ふと見るとウィル様の耳の辺りの髪の毛に桜の花びらが付いていた。
私はクスリと微笑んで、ウィル様の頬と耳の辺りに手を伸ばして桜の花びらを取る。
花びらが付いていたことを教えようとしたら、ウィル様が目を見開いた後に、サッと頬を赤くした。

「え?」

どうしたの?
すると、会場に今日一番の地響きするような歓声が沸き起こった!!

「え? 何事!?」

何で皆騒いでいるの?

「ミオ様、ありがとうございます!」

ギュッとウィル様に抱きしめられた!
そして嬉しそうな顔をして、私の頬にキスをした。

「ッ!!?」

何で!?

「ワァァァーーッ!!」

また会場に大きな歓声が鳴り響き、この状況に着いていけていないのは私だけだと悟る。

「聖女様がウィリアム殿下のプロポーズをお受けしたわ!」
「ウィリアム殿下、おめでとうございます!!」
「ミオ様、ウィリアム殿下、おめでとうございます!」
「やはりあの青色のベールはそういう意味だったのか!」

「ええ!? どういうこと!?」

今何て言ってた!?
耳を疑う言葉が聞こえてきたんだけどッ!!?

「やったわ!私達のお姉様よ!!」

ソフィー様の嬉しそうな声も聞こえて、クロエ様や国王様に王妃様達も笑顔で私達を見ている!

ウィル様は眉を寄せて切なく、でもとても幸せそうな微笑みを浮かべて言った。

「……私の聖女様だ」

「え? きゃあ!?」

フワッと体が持ち上がり、ウィル様が私を横抱きにして腕に力を込める。
甘く微笑むウィル様の美しい顔が近づいて、また私の頬にキスをした。

青空からは風に乗った桜の花びらが、この式典の成功を祝うかのように、また舞い落ちてきていた。



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