14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
プロローグ
「君は宮崎(みやざき)あやめではなく別人だろう? 俺の見合い相手は?」

 普段めったに食べられない五つ星ホテルの高級イタリアンレストランのランチでのお見合いもなんとかやり過ごし、そろそろ最後のドルチェを食べ終わる頃、相手の男性、忽那大和(くつなやまと)さんから鋭い声色で問われる。

 もうそろそろこの大役が終わるので若干気が緩み、残りのライチジェラートを口へ運んだところだった。

 キュッと心臓が縮んで、ジェラートが食道じゃなくて気管支の方へ流れる。

「ゴホッ、ゴホゴホ……コンコン」

「大丈夫か?」

 ひとしきり咳をして、その間どうにか話題を逸らしたいと思案する。

「は……はい。ゴホゴホ……」

 パニックに陥っていたせいで、その返事は今まで彼に対して話していた態度と違ってしまった。

 ここへ登場したときから、私は彼に対し高飛車な態度をしていたのだ。

 止めようとしても止まらない激しい咳きこみで黒縁眼鏡が顔から外れて、テーブルの上に飛び、カシャンと、ジェラートのお皿にぶつかって床に落ちた。

「あ!」

 眼鏡を取ろうと立ち上がろうとしたとき、一足先に忽那さんが私の横に来ていて腰を折り拾ってくれた。

「どうぞと、言いたいところだが……」

 端整な顔がグイッと近づき、まじまじと顔を見つめられる。
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