14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 ふたり掛けのテーブルに座って食べたかった蕎麦を注文して、ほうじ茶を飲む。

 十月中旬になり今日は肌寒い日なので、温かいお茶を飲むとホッとする。

「そういえば、以前ロビーで会ったイケメンいたじゃないですか」

 愛華さんが思い出したように話を切り出す。

「ええ……」

 大和さんのことだ。

「昨日知ったんですが、わが社の専務取締役だったんです。腰が抜けるほどびっくりしました」

 愛華さんは興奮気味に言って、目を丸くさせる。

「紬希さん、びっくりしないんですか?」

「そんなことないわ」

 薄い反応を突っ込まれて、首を横に振る。

「もう、あんなイケメンがわが社にいたんですよ? びっくりしてくださいよ。忽那大和さんっていうらしいです。社長の息子さんだと、昨日エレベーターで秘書課の女性たちが話をしていたのを聞いて、ピンときたんですよ。それで友人から情報を」

「秘書課の女性たちが話を?」

「地位もルックスも最高なので、秘書課の綺麗どころの女性たちが狙うのも無理はないですが。総務にいる私なんてどうにもならないですね」

 たしかにモテない要素が大和さんにはどこにも見当たらない。

「でも秘書たちの会話だと、取り付く島もないらしいですよ。冷淡で笑わないと」

「え? 冷淡で笑わない……?」

「秘書たち、そこが不満みたいですよ」

 そこへあんかけ蕎麦が運ばれてきて話が中断した。
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