14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 あんなにかっこいい人なんだから、秘書課の女性たちが騒ぐのも当然よね。
 でも冷淡で笑わないだなんて、それは仕事中だから?
 一緒にいて笑いあったりするのに……。

 あと二日で帰国予定って言っていたけれど、話があると言っていたから次回会ったときに恋人のフリは解除になるのかもしれない。
 無意識にため息が出る。
 この関係が長く続くなんてはなから思っていなかったし。

 
 金曜日、十八時の終業時間になってすぐ愛華さんはデスクの上を整理し始めた。これから弁護士との食事会があるらしい。

 彼女の結婚相手の理想は高く、高収入、高身長、イケメン、優しく、都内在住だそう。以前は大学の友人たちの紹介で男性と食事に行っていたというが、理想には届かず、今はマッチングアプリで会うことが多いと言っていた。

 まだ二十四歳なのに、愛華さんはなんとなくお付き合いするよりも、結婚を前提で交際できる人を探しているのだ。

「愛華さん、カップ洗っておくわ」

「いいんですか? じゃあ、お願いします」

「ええ」

 さてと、私もカップを洗ったら帰ろう。
 カップを手に廊下に出る。

 給湯室はオフィスから少し離れていて一番奥にある。わが社はお茶くみなどをしなくてよく、自分が飲みたい飲み物を入れて、汚れたものは自分で洗うことになっている。

 給湯室は三畳くらいの広さで、シンクの前に立つと愛華さんと自分のカップを洗う。
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