14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
八、懐かしい公園
翌日、十時に迎えに来ると言っただけなので、どこへ行くのかもわからないので無難に紺色のワンピースにした。
昨日お役御免になるのかなと尋ねたら、『紬希はそれでいい?』と私の気持ちを伺うように聞かれたっけ。
そのことでなかなか寝付けなかったのだ。
私は大和さんに惹かれているけれど、彼は違う。優しさも、キスも、向けられる笑顔もすべて偽りなのだ。
「可愛かったからキスしたくなったって、何なのよ……」
昨晩、曖昧にはぐらかされたことがあと数時間後にはわかる。そう考えたら、心臓がドキドキし始めて、緊張してきた。
約束の五分前に下に降りると、ダークグリーンの車が止まっていて、彼は外に出て待っていた。
ジーンズにカーキ色のスポーツブランドのブルゾンを着ていてラフな格好だ。
「おはようございます」
「おはよう。いつも時間に正確だな。乗って」
褒められているのか。でも、彼も今まで私より遅かったことがない。
助手席のドアを開けて促される。大和さんも運転席に乗り込んで、私がシートベルトをしたのを確認してから車を走らせる。
「よく眠れた? 西島のことで眠れなかったとか?」
「大丈夫です。眠れました」
眠れたというのは嘘で、大和さんの話が気になって三時頃まで目が冴えてしまっていた。
「良かった。西島の件は内容をまとめて社長に報告したから。許せないと言っていたし、被害に遭った女性社員に申し訳ないと」
「社長に……ありがとうございます」
「当然のことだ。おそらく被害者は紬希だけじゃないかもしれない。月曜から調査に入る」
「噂は聞いたことがありませんが……」
「たとえ、紬希だけが被害者だとしても、それ相応の処分は決定しているから安心して」
「はい。わかりました」
「なんだ、表情が硬いな」
ハンドルを握る片方の手が膝に置いた私の手をポンポンと叩いて戻る。
「あの、これからどこへ?って、聞いても内緒……ですか?」
「俺を良くわかってるじゃないか。そんな遠くないから」