14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 洗練されたビルトインのキッチンは使い勝手が良くて、メニューを覚えるために料理教室に通おうか考えるほど楽しい。

 なによりも大和さんと一緒に笑いながら作るのが、贅沢な時間だと思った。

「出来た! おいしそう」

 手早くカルボナーラ液に茹で上がったパスタを投入してかき混ぜる。

「上出来だな」

 アイランドキッチンの隣にある四人掛けのテーブルに運んで食べ始めた。

「ところで、脳梗塞を起こしたおじいさんは大丈夫だったのか?」

「そのときは助かったんだけど、五年前に再発して亡くなったの」

「そうか……」

 少し場がしんみりしてしまい話を変える。

「カルボナーラ、おいしいわ。あ、大和さん。ご家族のことを話して。大和さんは興信所に頼んだし、会社の履歴書で私のことは知っているけど、私はわかってないもの」

「ああ。今中学生の腹違いの弟、寛人がいる。電車オタクで義父はスポーツをやらせたがっているが、どうにもそうはならなそうだ」

「弟さんが。私たちが出会った年とあまり変わらない年齢ね」

「俺の方が大人びていたな」

 自信をもって話す彼をからかう。

「ふふっ、いつもベンチに座って本を読んでいたからオタクっていえばオタクじゃないかな? イケメンだったけど」

 遠巻きに女子中学生がベンチにいる大和さんを見ているところを、何度も目にしていた。
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