14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「そう。紬希が作ってくれたクッキーは甘かったがおいしいと思った。ちゃんと全部食べた。ちょこちょこ昔の話を会話に混ぜていたんだが、鈍感な紬希はまったく気づかなくて俺のことなんて記憶から消されていたのかと思っていたよ」

「大和さんが記憶力良すぎるし、「あれ?」と思うところもあったけれど、苗字が違うから別人なのだと」

「まあ俺もすぐに教えなかったし。あの公園ですべてを話したかったから」

 ふっと笑って、コーヒーをひと口飲んでいる。

「色々考えてくれていたんですね。クッキー、本当に食べられるのなら今度作りたいな」

「いいのか?」

「もちろん。今の部屋では作れないけれど。ここでなら」

「楽しみにしてる。あ、そうだ」

 大和さんはソファから立ち上がると、グレーと白の北欧風のチェストの引き出しへ向かう。

 戻って来た彼は隣に座り、私を見つめる。

「紬希、手を出して」

「手……?」

 言われるままに両手を出すと、大和さんは楽しげに笑う。

「左手でいい」

 大和さんは私の左手を軽く支えるようにして持ち、薬指にまばゆい光を放つダイヤモンドのリングをはめた。

「エンゲージリング……?」

「ああ。おしゃれな食事や豪華な花束のサプライズのないプロポーズですまない」

「ううん。大和さんが連れて行ってくれるのは、おしゃれなレストランばかりじゃないですか。もう充分ロマンティックな雰囲気を味わっています」
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