14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「おはようございます。今日の私はやる気に満ちているんです」

「何かいいことでもあったのかな?」

「はいっ! 恋は良いですよね。紬希さんもそうじゃないですか?」

「え?」

 彼女はまだ私と忽那専務の関係を知らないはずなのに、ドキッと心臓が跳ねる。まだ公表するには時期尚早な気がして、エンゲージリングははずしてある。

「だって、イメチェンしたのも恋をしたせいですよね?」

「ま、まあ……そうかな」

 楽しそうな愛華さんにつられて笑みが漏れた。


 午後、これから年末に向けて防災設備点検と清掃会社への連絡を済ませて、飲み物でも入れようと椅子から立ち上がった瞬間、目の前が真っ暗になって浮遊感に襲われた。

 慌ててデスクに手をついたが、脚の力が抜けてその場に座り込んだ。そのときにキャスター付きの椅子に腰がぶつかり派手な音を立てた。

「紬希さんっ、大丈夫ですか!?」

 愛華さんが席を離れて私の肩に触れて支えてくれる。

「ちょっと、立ちくらみが……ごめんなさい、びっくりさせちゃったね」

「今小会議室空いていると思うので、休んでから帰った方が良いのでは? ランチのときも食欲がなさそうでしたね」

 愛華さんに支えられて立ち上がり、椅子に座らせてもらう。
 まだ目を開けると焦点が合わず瞼を閉じる。

「秋葉さん、休んで収まってから帰りなさい」

 課長の声がすぐ近くから聞こえる。
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