14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「少し休憩したら治まるかと……」

「その状態だと、病院へ誰か付き添って行った方が良いか」

 課長の心配そうな声に、瞼を開けて「少し休んでから早退させてくださいと」言った。

 
 一時間後、贅沢だけれどタクシーに乗って帰宅した。

「おかえりなさいませ」

 マンションのドアマンがタクシーの横に立ち、頭を下げられる。

「ただいま……です」

 慣れない出迎えに、あまり頭を動かさないようにして挨拶してロビーに歩を進めた。

 挨拶するコンシェルジュのカウンター前を通り過ぎ、エレベーターホールへ行き、家に入るとホッと安堵する。
 壁時計の針は十五時を示している。

 大和さんは今日は遅いって言っていたから良かった。夕食を作らないで済むし、彼が帰宅することにはこの状態も改善しているはず。

 こんなに眩暈に襲われるのは初めてだったが、引っ越し作業で忙しかったり両親に大和さんを会わせたりするなど精神的なこともあったので、普段よりどっと疲れが出たのだろう。

 メイクを落として部屋着に着替えて、広いベッドに倒れ込むようにして横になり目を閉じた。
 体を横たえてすぐ眠りに引き込まれた。

 
 額にひんやりとしたものが触れて、意識が浮上した。

 目を開けるとベッドの端に腰を掛け、心配そうな顔をした大和さんがいた。室内にダウンライトのオレンジ色の灯りがついている。

「あ……」
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