14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「わかりました。ニューヨークへ行きます」

《フライトを取ったらメッセージを送る》

 そう言って通話が切れた。


 翌日、出社して三十分くらいが経ってから課長に呼ばれる。

「秋葉さん、ちょっといいですか?」

「はい」

 まだ出勤して間もないのに、もしかして大和さんから連絡が?
 社屋に入る前にメッセージを確認したが、彼から入っていなかった。
 仕事の手を止めて椅子から立ち、課長の席へ近づく。

「有給休暇が十五日ありますね。今やっている仕事は私に渡してください」

「それは……」

 周りに人がいるので、大和さんの名前を口に出せない。

「月曜日からの日付で休暇届を提出するように」

「申し訳ありません」

「いえいえ、有給休暇の消費は三日から五日くらいでしょう。理由は家庭の事情ですかね」

 課長はどのくらい事情を知っているのか気になったけれど、配慮してくれているのが表情と会話からわかる。

「ありがとうございます。それではよろしくお願いします」

 休暇届の用紙を受け取り席へ戻る。

「紬希さん、有給を取るんですか?」

 愛華さんが尋ねる。
 課長と私の会話を聞いていたのだろう。

「そうなの。ちょっと家庭の事情で……」

「有休が残っているのなら、使っちゃった方が良いですよ。わが社は一年で消化できないとなくなっちゃうし。あと三カ月しかないですから。仕事も結構暇になって来ていますしね」

「そう言ってくれると、気兼ねなく休めるわ。ありがとう」

 お昼休憩でスマホを確認すると、大和さんからフライトの予約確認書がメッセージで送られてきていた。
 明日のフライトだった。
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