14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 中型のキャリーケースを引いていた足を止めて、胸を暴れさせながら辺りを見やる。

 再会を祝っているのか、外国人の男女の抱き合っている光景に目を奪われていると、誰かが隣に立った。

「紬希さん」

 ハッとして見た先に、田中秘書がいた。

「あ……」

 迎えに来るのは大和さんだとばかり思っていたせいで、田中秘書にあぜんとなる。

「すみません。専務は最終の商談で私がお迎えに参りました。ホテルに戻る頃には終わっているかと思います」

「わ、わざわざありがとうございます」

 大和さんじゃなくてホッとしたのか、寂しいのか、自分の気持ちがわからない。

「キャリーケースを」

 田中秘書は私のキャリーケースを引き取り、「こちらです」と出口の方へ案内した。

 黒塗りの高級車の後部座席に座らされ、田中秘書は助手席に着座してすぐ走り出した。

 ごく普通の観光であれば初めてのニューヨークの景色をワクワクして見ているはずが、今はホテルに着いたら大和さんに会う緊張感で心臓が暴れていてマンハッタンを見る余裕がない。

 ここまで来たんだから、なる様にしかならない。私の気持ちを知られたら彼が困る。
 恋愛偏差値が低い私には、最難関過ぎる問題だった。

 テレビでよく見るニューヨークのタイムズスクエアなどの景色はクリスマスの飾りで彩っており、そういえば明日がクリスマスイブだったことに気づく。
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