14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「かわいいって言ってくれるのは大和さんだけよ? みんなの前で言わないでね」

 念を押してトーストをかじり、話そうと思っていたことを思い出す。

「大和さん、ホテルへ行く前にあの公園へ行ってもいい?」

「俺たちが出会った公園か。いいな。寄ろう」

 大和さんと約束して笑みを深めた。


 食事後、出掛ける支度を済ませて、彼の車で公園に向かう。到着したとき、まだ八時なので公園には誰もいない。

「今日も暑くなりそう」

「ああ。天気が良くて良かったな」

「うん。最高」

 初めて会話した水道のところへ足を運び、蛇口をひねる。

「あの子供たちにも感謝かも」

「あの子供たち?」

「噴水にならなかったら、私は止めに来ることもなかったし、大和さんと話せなかったから」

 小さく噴水のように出る水に口を近づけて飲むと、後退して彼も口づける。

「実はね。いつもアンニュイな雰囲気で本を読んでいる大和さんを遠くから見ていたの」

「え?」

「ずっと言えてなかったけれど、憧れの存在だったの」

「紬希、うれしいよ」

 照れ隠しに蛇口を閉めようとしたとき、水の量が急激に噴き出して頭に落ちてくる。

「きゃっ!」

「バ、バカ、反対回しただろ」

 大和さんが急いで蛇口を閉めるが、水が止まったとき、私たちは頭からびしょ濡れだった。
 お互いの濡れた姿に、笑いがこみ上げてくる。

「まったく……これから結婚式だって言うのに……」
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