14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 だけど、どうしてこんな素敵な人がお見合いをするの?

 このルックスと端整なマスク、そしてこの肩書があれば女性からモテてしょうがないはず。

 ダークブルーの三つ揃いのスーツは体にフィットしていて、私が知る会社員の男性のスーツ姿とはまったく違う。

「――みは?」

 忽那さんが何か話して考え事から現実に引き戻される。

「え?」

 一瞬素が出てキョトンと彼を見てしまうが、誤魔化すようにフルートグラスに手を伸ばす。

「趣味はなんですか?と、聞いたんです」

 それなら昨晩あやめと打ち合わせ済みだ。

「ボディビル選手権を観に行くことよ」

 ゴリゴリのマッチョを観るのが趣味だなんて、引くだろう。

「そうですか。ボディビルを。実は私も筋肉には自信があるんですよ」

 スーツを着ているとわからないけれど、案外鍛えているのかもしれない。

 そんなことを考えて、もう一度シャンパンを口に含んだとき――。

「見てみますか?」

 びっくりしてシャンパンを吹き出しそうになったが、堪えて飲む。

 あやめならどう答える?

「ず、……ずいぶん自信があるのね? でも、見るからに彼らとは比較にならないわ」

 きっと綺麗な筋肉なのは忽那さんの方だろう。

 実際、あやめが考えただけで、私たちふたりともボディビルダーなんて興味はない。テツヤさんはやせ型だし。

「たしかにそうですね。彼らに比べるに値しない」

 認める発言だが、気を悪くしたような声だ。

 忽那さんには申し訳ないけれど、これでいいのよ。
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