14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「あやめさんは結婚したら仕事を続けたいと思っていますか? 子供は?」

 これも打ち合わせ済みの質問だ。

「そうね。自由な時間がほしいわ。私、子供って好きじゃないの。忽那さんは?」

「そのときによりけりですね」

 それって、ほしいの? ほしくないの? どうでもいいってこと?

 かみ合わない会話をしながら、食事はホタテ貝のアーリオオーリオ仕立てのタリアテッレ、真鯛をアーモンドと杯で包んだ魚料理、柔らかいサーロインステーキなどを食べ終え、あとはドルチェだけになった。

 絶対にこんな女は願い下げだと思っているはず。

 もうすぐ私の役目も終わる。

 ドアがノックされスタッフが入室し、デザートの乗ったお皿が目の前に置かれる。

 綺麗な蔦模様のお皿の上にティラミスとジェラートが盛り付けられている。

「こちらのジェラートは甘味控えめのライチの味になっております」

 スタッフの説明でティラミスにスプーンを入れた。

 口に運び、ほろ苦いティラミスにさすが一流レストランと心の中で思う。頬が緩みそうになるが、堪えて忽那さんを見ると、彼はコーヒーを飲んでいた。

 ブラックコーヒーが彼の好みのようだ。私は砂糖とミルクをたっぷり入れなければコーヒーは飲めない。

 んー、ティラミス、おいしすぎる。ライチのジェラートなんて初めて。ライチ自体、滅多に食べないけれど、爽やかでティラミスを食べた口の中をさっぱりしてくれる。

 今頃あやめはショッピングモールで営業しているテツヤさんを応援しているかな……。

 残りのジェラートを口に入れたとき――。

「君は宮崎あやめではなく別人だろう? 俺の見合い相手は?」

 突然の指摘に心臓が縮み上がり、ジェラートは気管支に入り込み、激しい咳きが出る。

 さっきまで「私」だったのに、「俺」って? 今まで猫をかぶっていたの?
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