14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
母と義父は俺に結婚をしてほしいと思っている。母と義父は七年前にニューヨークから帰国した。
父親違いの弟、寛人もニューヨークへ行ってから翌年に生まれたが、まだ小さいため両親と共に日本へ戻った。
俺は向こうの大学に通っていたから単身残り、MBAを取得し、大学を卒業後、光圀商事のニューヨーク支社で働き始めた。
七年前に義父が帰国したのは、光圀商事の社長就任のためだ。現在も社長を務めている。
重役や理事には親戚が多数いるが、義父は五年以内に社長の座を俺に譲るつもりでいる。だが、それには独身ではなく既婚者が望ましいと考え、見合いをさせられたのだ。
とはいえ、宮崎あやめに契約結婚をしてもらおうと思っていたというのは出まかせで、紬希を手放す気はなかったからだ。
「……」
「首を突っ込んだ君にも責任があるよな?」
「……それは否定しません」
「ってことで、君が俺の恋人になってもらおう」
「ええっ!?」
紬希から俺の元へやって来たんだ。このチャンスは逃せない。
「もとい、恋人のフリだ。両親は俺に落ち着いてほしいと思っている。あわよくば孫の顔が見たいんだ」
「だからって、恋人のフリだなんて無理があります。私はあやめのような社長令嬢じゃないですし。万が一身元を調べられたらご両親は相応しくないと思うはずです」
「それは上手くやるから問題ない。君のことを教えてくれないか」
そう言って、スーツの袖を少し持ち上げて腕時計に目線を流す。
ここにはかれこれ二時間近くいる。
水を給仕にやって来たスタッフに会計を頼み、財布からカードを出した。
「あ! ここは私が払います」
「その金は宮崎あやめに返してくれ。いや、君が時給としてもらっておくべきじゃないか? ここを出たら一時間くらいドライブに付き合ってくれ。君を知りたい」
いったん話を終わらせ、席を立った。