14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
三、思わぬ展開



 イタリアンレストランをあとにして、忽那さんはエントランスに用意されていた高級外車の助手席に私を乗り込ませた。

 初対面の人の車に乗るなんてと警戒心はあったが、なんせあやめのフリをしたという弱みを握られている。

 高級外車はパッと見、黒に見える艶やかなダークグリーンで車内は革の匂いがした。

 帰国して一カ月と言っていたから、新車なのだろう。

 一時間くらいドライブと言っていたけれど……。

 忽那さんの先ほどの〝恋人のフリ〟の五文字に戸惑うばかりだ。

 車は低重音のエンジンとともに動き出した。

「秋葉紬希さん、君の年齢は?」

「あやめと同じ二十六歳です。彼女とは高校からの親友です」

「だろうな。親友じゃなければこんなこと引き受けないだろうから」

 忽那さんはハンドルを握り、危なげない運転をしながら話をする。

「君の勤め先は?」

 正直に話すしかないのだろうか……。からかわれているのではなく、本当にこれから偽の恋人になるのなら、嘘を吐くわけにもいかないし……。
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