14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
四、私の心をかき乱す人
数日後、大和さんから『出張でニューヨークに行ってくる。また連絡する』と言ってから一カ月が経ち、十月になった。朝晩は薄手の羽織るものが必要になってきた。
彼の連絡を待っているわけではないけれど、音沙汰がないことにあれこれと考えを巡らしてしまう。
あれこれとは、恋人のフリをしなくても良くなったのか、好きな女性が現れたのか、忙しいのかなどだ。
五階の総務課と二十五階の重役フロアとでは、まったく世界が違うみたいに会うこともない。
「おはようございます」
総務課と経理課がワンフロアを使うドアを開けて、誰ともなく挨拶をして自分のデスクへ歩を進める。
女性社員の制服はなく、ジーンズ以外なら問題はない。
着席してパソコンの電源を立ち上げているうちに、隣の席の二歳年下の松下愛華さんが「おはようご
ざいまーす」と現れた。
愛華さんは肩甲骨辺りまであるブラウンの髪を緩く巻いていて、服装はいつも明るい色味でゆるふわ女子だ。
大学卒業後入社した彼女と私は同期になる。
「おはようございます」
「紬希さん、おはようございます。聞いてくださいよ。さっきロビーでめちゃくちゃイケメンを見かけたんですが、社内の人なんでしょうか。紬希さん、知っています?」