14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 依頼は秘書課からで、【専務取締役〝忽那大和〟】とあった。
 かれこれ大和さんが本社に来てから二カ月が経っている。

 以前どのくらいの枚数でいつ発注したのか確認する。大量に刷ったはずの名刺はなくなってきているらしい。その分、彼はたくさんの取引先と会い、商談で忙しいのだろう。

 終業時間になって、いつもと違うメトロに乗って銀座へ向かう。今日はあやめと約束をしている。

 週の初め早々に夜会うなんてめずらしいが、あやめの都合で今日になったのだ。彼女が多忙なのも理由のひとつだが、買ってきた群馬のお土産の賞味期限が迫っているらしい。

 先日の遊園地から帰宅したあと、お見合いの件であやめに連絡を入れてある。

 断りの連絡を入れた際、あやめに再びお見合いの話が来てしまうのではないか、それであれば宮崎家にはしばらく断りを入れない方向がいいのではないかと忽那さんから提案されたとメッセージを送っていた。

【それもそうね。付き合っているように見せかければ、私もテツヤと会いやすいもの】

 あやめから安堵した返事が戻って来たのだ。

 待ち合わせのレストランはカジュアルダイニングの有名店だ。

 銀座の大通りから少し入ったビルのエレベーターに乗ってレストランのある階で降りる。
 広々とした空間にたくさんの人が食事をしているが、銀座ということもあって外国人の姿が目立つ。
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