14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 そうこうしていると、マンションの一階のインターホンが鳴った。

 住人の許可がなければマンション内へ入館出来ず、セキュリティ面がしっかりしているところが両親の最大重要点だった。
大学三年でひとり暮らしをさせるのが心配な両親もここならと、決めた住まいだった。

「いらっしゃーい」

 玄関のドアを開けると、華やかな雰囲気をまとうあやめがにっこり笑顔で立って軽く手を顔の横で振る。

 今日の彼女の装いは、花柄のラベンダー色のAラインワンピースだ。髪はナチュラルなブラウン色でふんわりとしたウェーブボブで柔らかい雰囲気だが、好き嫌いがはっきりした性格の彼女は、クラスにひとりはいるリーダーシップをとる外交的なタイプだ。

「おじゃましまーす」

「どうぞ入って」

「もー、家に戻っているんだから、その黒縁眼鏡は外したらどう?」

 そう言って、あやめは片手で持っていた大きなショッパーバッグを、ベッドとテレビ台の間にある小さなローテーブルの上に置く。

 普段自宅へ戻ると伊達である黒縁眼鏡を外すのだが、あやめが来るので動き回っていたので忘れていた。

 以前の会社で上司にセクハラを受けたのが原因で転職したが、新しい職場でもまたそんなことがあったらと思うと、自分を地味で洒落っ気のない女性に作り上げていた。
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