14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「それもあるが、母にこの近辺でおいしい夕食が食べられると場所はないかと聞いたら、ここを勧められたんだ。スマホにかけても繋がらないから、ここにいるのではないかと目星をつけてかけたらしい」

 彼はグラスに残っていたノンアルコールビールをゴクッと煽る様にして飲んだ。

 少し苛立って見えるのは気のせい……?

 シャインマスカットがふんだんにのったケーキのデザートを食べてから、私たちは浴衣から服に着替えてロビーに下り、総支配人に見送られて東京に向かった。

「眠ってていいからな。この時間だから二時間もあれば着くはずだ」

 中央道にのると、道路が空いている。

「大学生の頃の話をしてくれませんか?」

 ふと、大和さんのことが知りたくなって言ってみる。

「え? 突然だな」

「ゴルフのアマチュア大会に出ていたなんてすごいなと」

「ニューヨークに引っ越したとき、ゴルフが出来れば将来役に立つからと勧められたんだ。英語も上達したかったから、ゴルフを通じて学べたしな」

「何歳でニューヨークへ行ったんですか?」

「十四歳だ」

 中学二年生……で……。公園で知り合った彼と同じだ。名前も同じ……。

 大和さんといると、中学一年生の頃に出会った彼を思い出す。

 だけど、彼は溝口大和で苗字が違う。

「どうした?」

 前を向いてハンドルを操作しながら大和さんは尋ねる。

「え? いいえ、なにも……」

「眠くなったんじゃないか? 眠ってていいよ。俺のことは気にしなくていいから」

 大和さんの口元が楽しそうに緩む。

「……はい」

 眠るのは申し訳ないと思いつつ、盛りだくさんの一日に加えて、温泉に浸かり、豪勢な夕食でおなかがいっぱいで瞼が下りてきた。
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