14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 俺は明るいレモンイエローの同じデザインのものを決めさせてもらう代わりに、俺の服を選んでもらった。

 紬希は楽しそうに派手なベビーピンクのシャツを選んだ。

 仕返しなのだろう。ちょっとしたいたずらだ。そう思うと、あの頃の無邪気な紬希が垣間見えた気がした。
 ベビーピンクは嫌いな色ではないが、最近では選ばない色だ。

『自分はダーク色を選びたがるのに、俺には違うってことは、これの仕返し?』

 そう尋ねると、紬希は顔を若干赤らめて否定した。そんなやり取りが楽しい。

 レモンイエローのワンピースに着替えた彼女は落ち着かない様子。だが、俺には太陽のように明るくてより可愛く見える。

 落ち着かないから眼鏡を返してほしいというが、それは本心ではない気がしてランチに話を逸らした。

 数日後から突発的なニューヨーク出張が入り、紬希にまた連絡するとメッセージを送った。

 ニューヨーク支社では俺でなければ商談をしないという顧客や、取引先の重役がかなりいる。

 向こうは実績、信頼、そして俺が創業者一族であることが、ビリオネアに住む人種には価値があり、それ以外は鼻にも引っ掛けないのが現実だ。

 商談をいくつかまとめ、十日間の出張を終わらせたのち、九月の下旬帰国した。
 その間、紬希と話をしたいと思っていたが、仕事に忙殺され電話をかけられなかった。
 それに、海外まで行って恋人のフリだけの関係で【元気か?】と言うのもおかしい気がしたのだ。
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