14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる


 その日、昼過ぎに外出から戻り、男性秘書の大倉(おおくら)とエレベーターに歩を進めていると、ふいに女性の声が聞こえてきた。

「秋葉さん、あの人です! 今通った」

 紬希?

 声のした方へ顔を向けた先に、白いブラウスと紺色のカーディガン、同色のスカートを身に着けた紬希が、クリーム色のツーピース姿の女性と一緒にいた。

「きゃっ、こっち見た」

 隣の女性は両手を口元に当てるのを見たが、俺の目は紬希を注視する。

 驚くことに彼女は黒縁眼鏡をかけていなかった。

「い、行きましょう。お店が混んじゃうわ」

 そう言って、隣の女性を促し、軽く俺に頭を下げて彼女はセキュリティゲートを通って去って行った。

 紬希は少しずつ変わろうとしているのか……?
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