14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
六、元の自分に戻る



 月曜日の朝、洗面台に映る自分の顔をジッと見る。

 わからないくらいにメイクをしてみたのだ。今日は黒縁眼鏡もかけずに出勤しようと思っている。

 愛華さんみたいなかわいい女子がセクハラされないんだから、地味に徹していた私は自意識過剰だったのかもしれない。

 大和さんに言われてみて、そろそろおしゃれが好きだった本来の自分に戻ってもいいのかもしれない。

 週末にはヘアサロンでぼさっと感のある髪を軽くしようかな。

 白いブラウスにAラインの紺のスカート、同じ色のカーディガンを羽織る。

 ふと窓辺へ視線を向けると、サンキャッチャーが太陽の光を浴びてキラキラしている。

 見ているだけで元気が出てくる。

「さてと、行きますか」

 玄関に向かう脚が止まる。黒縁眼鏡を持っていった方がいいのか、迷ったからだ。

 持っていったらかけてしまいそうだ。

 そのまま洗面所に戻ることなく、玄関に向かいパンプスを履いた。

 黒縁眼鏡をかけずに職場へ赴くのは、ドキドキが止まらない。この二年間ずっと掛けていたから、大切なものを置いてきたような気がしてならない。

 エレベーターに乗り込み五階で下り、総務課に歩を進めていると背後から「紬希さん、おはようございます」と声がかかる。

 振り返る私に、愛華さんがびっくりしたように目を大きく見開いた。
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