14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「紬希さん、どうしちゃったんですか? 眼鏡、壊れでも……?」

「え? ううん。何でもないわ。気分転換なだけ」

「前から思っていましたが、よく見ると美人なんですね。あ、今日はメイクもしてるんですね。何か心境の変化ですか?」

「な、何もないわ。行きましょう」

 愛華さんにどんどん突っ込まれてしまうので歩き出した。

 二年間、黒縁眼鏡をかけて暗い雰囲気を出していたので、驚かれるのも無理はない。

 デスクに向かい仕事を始めると、フロアで私が黒縁眼鏡をかけていないと不思議に思ったのか、総務課の隣にある経理課の人たちまで、総務課に用を作ってチラ見していく。

 愛華さんが私の方に顔を近づけてにっこり笑う。

「今日は人のでは入りが多いですね。みんな、紬希さんの顔を見てから去って行くわ。紬希さんが綺麗なんでみんな驚いているんですね」

「綺麗じゃなくて、いつもと様子が違うからよ」

「謙遜しなくていいですよ。そうだ、ランチは地下街へ行きませんか? 新しく何店舗かオープンしているみたいですよ。もう一カ月くらい経っているのでそれほど並ばないかと」

「ええ。気になっていたの」

 毎日ではないが、誘われたときは断らずに同行している。

 十二時になって、愛華さんと共にデスクを離れ、エレベーターに乗った。
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