14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「中華、和食、洋食、何が食べたいですか?」

 愛華さんが尋ねているうちにエレベーターはロビー階に到着し、セキュリティに歩を進めようとしたとき、背の高い男性がふたり横を通った。

「紬希さん、あの人です! 今通った」

 愛華さんのあからさまな声に、その人が振り返る。

「きゃっ、こっち見た」

 大和さんだった。

 彼は愛華さんを見てから、私へ視線を動かした。

 こんなところで会うなんて考えてもいなくて、とにかく慌てた。

「い、行きましょう。お店が混んじゃうわ」

 ぼーっと大和さんを見ている彼女を促し、軽く彼に頭を下げてセキュリティゲートへ向かった。

「とってもかっこよかったですね。思わず左の薬指見ちゃいました。でも、どうして振り返ったんでしょう」

「愛華さんが大きな声だったから」

「え? そ、そんなに大きい声じゃないですよ。あの男性、奥のエレベーターに向かっていましたね。重役階に用事があるのでしょうか」

 大和さんがわが社の重役だなんて、夢にも思っていないのだろう。

「そうじゃないかしら。早く行かないと」

「あ、そうでした。急ぎましょう」

 私たちはランチ時間で混んでいる地下街へ早歩きで向かった。


 その夜、スーパーでネギと油揚げ、麺つゆを買って帰宅した。先日あやめからもらったお土産のひもかわうどんを茹でて夕食にするつもりだ。

 作り終えてローテーブルに運び食べようとしたとき、スマホが鳴った。
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