14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 画面には〝忽那大和〟とあり、急いでタップしてスピーカーにして話す。

「もしもし」

『俺だ』

「お疲れさまです」

『眼鏡はどうしたんだ? 壊れた?』

「いいえ。過去は過去なので、もう少しおしゃれを楽しもうと考えたんです。前向きに」

『そうか……いいんじゃないか』

 あれ? 俺の言った通りだな。なんて、俺様っぽく言わないの?

「……今日は偶然に会って驚きました。あ、同僚が失礼しました」

『ああ。ずいぶん賑やかな女性だった』

「一度大和さんを見かけたらしくて、あの人ですと、教えてくれたんです。ゴルフはどうでしたか? まだオフィスですか?」

 少し照れくさくて饒舌になってしまう。

『ゴルフはつまらなかった。まだ執務室にいる』

「そうだったんですね……残業お疲れさまです。お仕事に戻ってください」

 もう二十時を回っている。私と話をしているよりも、仕事を終わらせて早く休んだ方が良い。

『紬希がいなかったから、つまらなかった』

「え……?」

『じゃあ、また連絡する』

 私の返事を待たずに、通話が切れる。

 私がいなかったから……つまらなかった……?

 恋人のフリをしている私に惹かれている? ううん、まさか。
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