14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「良かったねと、喜びたいのはやまやまなんだけど、御曹司は令嬢と結婚するものよ? 付き合うだけならいいけど、それ以上望んだら紬希が不幸になるわ」

「あやめ……、結婚なんて考えてないわ。まだ好きなのかわからないって言ったでしょう?」

 私たちの関係は、度重なるお見合いに辟易している大和さんを助けるための恋人のフリだ。

「紬希は好きになったら、とことん好きになるでしょう? 前に話してくれたじゃない。中学の頃に知り合った彼のこと。好きになったのはその彼だけで、ずっと彼氏を作らなかったでしょう?」

「う……ん」

 たしかにずっと好きになれる人はいなかった。だが、それは性格が合わないとか、時間のすれ違いとかで、一、二度出掛けても恋に繋がらなかったのだ。

 セクハラを受けて転職したあとは、大和さんに会うまで誰ともデートみたいなことはしていない。

「ようやく好きになれる相手が出来たのはうれしいけれど、あとでつらい思いをしたら可哀想だから」

「大丈夫よ。彼は素敵だから、相応しい女性と出会って私との契約はなくなるわ」

 そう口にしたとき、胸がズキッと痛みを覚えた。

 やっぱり大和さんのことを好きになってしまったのかも……。

「そんな割り切った言い方、紬希じゃないわよ。私が何度行っても地味子を止めなかったのに、彼と数回会っただけで変わるなんて、影響力ハンパないから」
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