14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「たしかに、大和さんの影響力は大きいね。あ、もうそろそろ行こうよ。私、久しぶりだし、他の芸人さんの漫才もみたいわ」

 親友のあやめにさえも、本心を打ち明けられない。きっと心配をかけてしまうし、お見合いに行かせたことを悔やむかもしれない。

「久しぶりだったわよね。じゃあ、行きましょうか」

 まだ飲みかけのカフェオレのカップを持って、徒歩七分ほどのライブハウスへ向かった。

 今日は若手芸人が八組ほど出るようで、三十人ほど集客できる観覧席は三分の二ほど埋まっていた。

 開始五分前、あやめが押さえていた前から二番目の端の席に座ったところで、ジャケットに入っていたスマホが振動した。

 大和さんからだ。

「ちょっと電話に出てくるね」

 席を立って、すぐ近くのドアから通路に出る。

 心臓をドキドキさせながら通話をタップすると、『もしもし?』と大和さんの声が聞こえてきた。

「大和さん、紬希です」

『ああ。今大丈夫か?』

 電話に出るのが遅かったから、気遣うような声色だ。

「はい。大丈夫です。何か……?」

『夕食をどうかなと思ってかけたんだ』

「あ……これからあやめの彼が出ているライブを観ることになっていて」

『何時に終わる? その後の予定は?』

「七時には終わるかと……でも――」

 それから会うのでは申し訳ないと考え、無理だと言おうとすると、大和さんに遮られる。
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