14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
『予定がないなら夕食を食べよう。どこ? 迎えに行く』

「え? 迎えだなんて」

『宮崎あやめがいるんだろう? 一度顔を見たい』

 あやめに会ってみたい。そう言うことなのね。

「わかりました。では、あやめを紹介しますね」

『七時頃行く。スマホに場所を送ってくれないか?』

「はい。電話を切ったら送りますね」

『よろしく』

 通話を終わらせてライブハウスのURLを大和さんに送る。それから客席に通じるドアを開けて入ると、すでに一組目の漫才が始まっていた。

 体を縮こまらせて静かに座席に戻る。

「紬希、電話大丈夫だった?」

 会場は笑いで賑やかだったので、あやめに聞かれて「うん」と答え、一組の若手芸人が舞台を去ってから口を開く。

「さっきの電話、大和さんからだったの。夕食に誘われて、ここにいることを言ったら、迎えに来るって」

「え? ライブが終わったら、三人で飲みに行こうと思っていたのに」

「三人じゃ、私はお邪魔でしょう。それで、彼があやめに会いたいって」

「私に? ……でも、そうね。会っておくのもいいかもしれないわ。迎えに来るだなんて、思ったより仲が良いんじゃない? やっぱり心配だわ。利用されるのも大概にさせてね」

 あやめが冷やかすようにニヤッと口角を上げる。

「そんなんじゃないわ。たまたまよ」

 首を左右に振り否定したとき、二番目の若手芸人が舞台に現れた。
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