ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 その時の男は、葉梨が刑事課に転属になった後にある事件で関わる事になった。保険金詐欺だ。
 保険代理店のその男は限りなく黒だが、立件に至らなかったという。

「葉梨は女将さんか、もしくはお店に金銭的な問題があるのではと言っていました」
「それだけ?」
「はい」

 二人の顔色が少し、変わった。
 私の顔を見ている松永さんは、「わかった」とだけ言った。
 隠している事は無い。葉梨から聞いた事を全て話したのだ。問題無いはずだ。

 松永さんはロングアイランドアイスティーを飲み干し、カルーアミルクを注文した。私たちはどうするかと問われ、岡島はビールで私はもう一度ロングアイランドアイスティーを注文した。松永さんは少し眉根を寄せた。

「お前さ、おかしいと思わない?」
「えっ、あの、何の事ですか?」

 松永さんは溜め息をついた。
 岡島は何か考えているようだ。

「同業の飲みは相澤を連れて行けっつってんのに葉梨とはサシで飲んだろ? 二回。こないだは飲んでねえみたいだけど」

 ――なぜ、知っているのだろうか。

「お前らがサシ飲みしてんの、岡島は葉梨に聞いて知ってるし玲緒奈さんも知ってる。でも何も言われない事を疑問に思わなかったのか?」

 ――言われてみればそうだ。

「ホントさ、気をつけてよ。もう、あんな思いはしたくねえだろ?」

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