【SS集】きゅん、集めました


 槙野にドキッとしただけなのに、先生まで呼ばれたら恥ずかしい!

 そう思って必死に止めると、離れた槙野はわたしを観察するように見つめて、不意に微笑んだ。




「なるほど。では、“私”にときめいて?光栄です」


「!!」


「ですが、財閥の令嬢たるもの、そう簡単に本音を明かしてはいけませんよ。駆け引きのテクニックをお教えしなければなりませんね」




 白い手袋に包まれた手が伸びてきて、わたしの両頬を包み込む。

 近づいてくる槙野の顔に体温が上がって、ぎゅっと目をつむり顔をそらすと、「目をそらしてはいけません」とささやく声がした。




「お嬢様、私の顔を見てください。これから毎日を共にする顔です。決して目をそらさず、じっと見つめてください」


「っ…槙、野…」


「はい、お嬢様。そんなにかわいらしく頬を染めてはいけませんよ」


「む、無理よぉ…っ」
< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop