終焉告げる金色の蝶と死想の少女
 ひと仕事を終えたローエンは沈黙したまま、ステンドグラスを見上げている。いつも語らないのが常だが、果然(かぜん)終わりまで奇妙だった。


「生きる美しさを見い出せたのなら、きっと今も彼女は……。――いえ、所詮私の戯言ですね。今のは忘れてください」



 柊と楪は顔を見合わせる。やはり、月伽は主にとって特別な存在なのかもしれない。美しさだけで惹かれた、なんて理由だけじゃないだろう。


 ローエンは振り返る事なく柊に紅茶を頼む。差し出がましいと思ったが、紅茶のシフォンケーキも一緒に出そう。――何となく、そうしたいと思った。


 それを察した楪も手伝うと言って、柊と共に部屋を後にする。



 書架にひとり残ったローエンは、金色の蝶となって席を離れた。

 


 今度こそ、部屋は空っぽになった。



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