終焉告げる金色の蝶と死想の少女
零れ落ちた者と傍観者
 いつもの朝。


 いつもの庭園の水やり。


 いつも通りの、日常。――ただそこには、“あの少女”がいない。



 忘れたことは一度もない。それでも日を跨ぐたび朧気になってゆく、輪郭はぼやけていく。何故、と言いたかった。



 でもきっとこれが“ふつう”なんだろう、あの少女にとっては。なのに、感情はそれを許してはくれない。らしくないと思いながらも深紅の薔薇に水を撒く。



 静かな水面に波紋を描くように、言葉が降ってきた。



「花に罪はないですよ」


 早朝の庭園に、自分以外いるのはおかしい。この時間――あの少女以外は禁じているはず……しかし振り向く事は果たして、“正しい”のか。


 そんな思考は一瞬で消し飛ぶ。





「はじめまして“希石”くん」




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